兵庫県神戸市灘区でアスリートのコンディション管理・競技力アップを支えるトレーニングスタジオ「ウイニングボール」

コラム006 鈴木翔太選手|パワーライントレーニングで「勝てる身体」をつくるウイニングボール

大きなターニングポイント、そしてすぐに現れた変化

— 松尾さんのトレーニングを受けるようになったのが、16年の6月からとお聞きしました。同年オフのウインターリーグ(台湾)で好投され、17年のシーズンにつながるきっかけになったと思うのですが、それもトレーニングの成果だったのでしょうか?

鈴木 もちろんそうです。効果はもっと早い段階から出ていましたよ。身体の動きが全然違うんです。8月から9月くらいには身体のキレが違っていました。

— 動きというのはピッチングフォームに関してですか?

鈴木 ピッチングフォームだけではありませんね。例えば走る時のフォームとか、あらゆる場面での身体の動きが良くなっていると感じました。あとは気持ちの面が変わりましたね。「野球をしていて楽しい」と思えたのは久しぶりでした。結果が出ない時は自分のボールも投げられないし、正直つまらないなと思うこともありましたが、トレーニングで身体が変わることによって、「これなら来年はやれるんじゃないか」という希望の光が見えた気がしましたね。それが9月くらいだったと思います。

— なるほど。では松尾さんとのトレーニングが大きなターニングポイントになったわけですね。ちょうどオフに差し掛かる時期ですので、「早く投げるチャンスがほしい」と思われたのではないですか?

鈴木 そうなんです。だからウインターリーグ出場の打診があった時には「喜んで行きます」と手を挙げました。そこで結果を残せたのが大きな自信になりましたね。

— 身体の動きがいい、というのは「打たれる気がしなかった」という高校時代と同じものですか?それともまた別のものですか?

鈴木 別のものだと思っています。当時は身体の感覚を意識して投げていたわけではなかったです。今は身体のどこをどう使って投げているのかを考えながら投げられるようになってきたので、追い求めているもの自体が当時とは違うと思います。

— そのような意識を持って投げるようになったのも、松尾さんの指導のおかげということなんでしょうね

鈴木 はい、そうだと思います。

— とはいえ、専属トレーナーという形で松尾さんに依頼し、自主トレでは海外に渡るというのは金額的にも大きな決断が必要だったかと思います。特に結果が出ないと球団からの評価も下がる中で、迷いやためらいはなかったのですか?

鈴木 迷いはなかったですね。もう自信しかありませんでしたね、昨年のシーズンオフの頃は。「投資した分は活躍して取り返せばいい」と考えていましたし、それができるという自信にあふれていたと思います。そこまでやってダメだったらやめようという覚悟もありました。

— ちなみに、オーストラリアでの自主トレはいかがでしたか? それまでのオフシーズンの過ごし方と比べて良かった点を教えていただけますでしょうか

鈴木 やっぱり暖かいところで身体を動かせるのがいいですね。それに設備面もしっかりしていて、投げやすいブルペンもあるのでしっかり投げ込めました。あと、個人的には環境を変えてトレーニングに打ち込めたというのも良かったですね。それまで自主トレは母校のグラウンドを借りてやらせてもらっていたんですが、地元に帰るとどうしても野球に集中するのが難しい面もあって…それでトレーニングに専念できる環境を作るというのも大きな意味がありました。松尾さんにずっと見てもらえるというのも、貴重な機会ですからね。

— 一日のトレーニングの時間はだいたいどれくらいでしたか?

鈴木 朝6時くらいから午後3時くらいまで、毎日みっちりやりましたね。トレーニングはかなりハードでした。本当にハードなんですよ、松尾さんのトレーニングは。これはどれだけ回数を重ねても慣れるものじゃないです。でも、「やらないと後はない」という気持ちだったので、とにかく必死にやりましたね。

— なるほど。改めてその決意の強さを感じます。かつての鈴木選手と同じように、期待を背負ってプロの世界に入りながら結果を残せずにいる選手も数多くいます。似た境遇の選手に何かメッセージを残すとすれば、どんな言葉を送りたいですか?

鈴木 僕の場合は、他人の意見だけに流されるのではなく、自分で考えて行動することの重要性を学びました。そして、信頼できる人に出会えたら、その人にとことんついて行く。勝負の世界なので、他の選手と同じことだけをやるのではなく、自分に合うトレーニングや練習法を探し求める姿勢が大事なのではないでしょうか。僕自身も、プロ入り直後を振り返ってみるとそこまでの意識を持てていなかったように思いますし、色々な経験を経ることで変われたのかなと感じています。